本作は、これまで邦画では成功例が無かった「料理」に関する映画。2週間のパリでの大規模なロケも効いて、見事に上質な「料理映画」に仕上がっています。世界40ヵ国で出版されている「ミシュランガイド」の中で最も競争率が高いとされる「フランス版」において、最難関の本番フレンチでアジア人初となる“三つ星”を狙う、というリアリティーにこだわった設定です。ちなみに、連ドラ「グランメゾン東京」の放送が終わった2019年12月29日から約1か月後の2020年1月27日にフランスで発表された「ミシュランガイド・フランス版」で日本人シェフがその快挙を実現しています。そして、そのシェフが本作の料理監修を務めることで、本作のリアリティーがより増すことにもつながっているのです。料理シーンにおいて闘うようなサントラの下、エッジの効いたメリハリのある映像を多用するなど飽きない工夫が多くなされています。特にすべてを締めくくる終盤のリアリティーは、監督による上質な映像表現に加え、映像ではカバーし切れない脚本家による上質な表現も随所に散りばめられていて、これら制作人の力量と、キャストとの化学反応によって邦画史上最上級な「料理映画」が誕生。
まさに三つ星のコンセプトと同様に、お腹ではなく心を満たす上質な作品と言えるでしょう。