北朝鮮、新型の極超音速中距離弾道ミサイルの発射実験に成功と発表 「マッハ12に到達」と主張(高橋浩祐) – エキスパート – Yahoo!ニュース

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

1月6日に発射された北朝鮮の新型の極超音速中距離弾道ミサイル(労働新聞)

北朝鮮国営メディアは7日、最高指導者の金正恩総書記の参観のもと、同国ミサイル総局が6日に新型の極超音速中距離弾道ミサイル(IRBM)の発射実験に成功したと報道した。

同国の労働新聞は、このミサイルが「どんな防御障壁も効果的に突き抜け、相手に深刻な軍事的打撃を加えることができる」と伝えた。北朝鮮メディアは今回の固体燃料式のミサイルを「新型極超音速中長距離弾道ミサイル」と表現しただけで、「火星○×」といった呼称を具体的に与えていない。

1月6日に発射された北朝鮮の新型の極超音速中距離弾道ミサイル。白い噴煙は固体燃料使用の特徴(労働新聞)

労働新聞によると、今回のミサイルは首都、平壌市郊外の発射場で東北方向に発射された。ミサイルの極超音速滑空飛行戦闘部(弾頭部)はマッハ12(音速の12倍)に達する速度で「第1次頂点高度」の99.8キロメートルに達し、その後、その後降下して再び「第2次頂点高度」の42.5キロメートルを飛行した。そして、予定された軌道に沿って飛行して1500キロメートルの公海上の目標仮想水域に正確に弾着されたという。

1月6日に発射された北朝鮮の新型の極超音速中距離弾道ミサイル(労働新聞)

労働新聞は「新しい戦略兵器システムの試験は、変化する地域の安全環境に合わせて潜在的な敵に対する戦略的抑制の持続性と効果性を高めていくための国防力発電計画事業の一環である」と主張。そして、「新型極超音速ミサイルの発動機体制作には新しい炭素繊維複合材料が使用され、飛行および誘導操縦システムにもすでに蓄積された技術に基づいた新しい総合的かつ効果的な方式が導入された」と報じた。

新型の極超音速中距離弾道ミサイル試験発射を画像を通じて「参観」する北朝鮮の最高指導者、金正恩氏(中央)と娘のジュエ(奥)(労働新聞)

さらに、「今回の試験発射は、現時期の敵対勢力によって国家に加わる各々の安全脅威に対処し、我々が極超音速中長距離弾道ミサイルのような威力のある新型武器体系をしっかり更新していることを疑うことなく証明した」と報じ、「このような武器体系を保有した国は世界的に数少ないだろう」とも伝えた。

北朝鮮メディアが報じた写真を見ると、6日に発射されたミサイルは、昨年1月15日に打ち上げた名称のない固体燃料式の極超音速IRBMは円錐形の機動式再突入体(MaRV)を搭載しているように見える。一方、昨年4月2日に発射実験された新型のIRBM「火星16B」は胴体が揚力を発生するリフティングボディー形状の極超音速滑空体(HGV)を搭載する。同様のMaRVは2022年1月に2回試験された液体燃料IRBMに搭載された。一方、昨年4月と同様のHGVは2021年9月にも液体燃料の火星8で公開テストされていた。

日本の防衛省の6日の発表によると、北朝鮮は同日正午過ぎ、北朝鮮内陸部から少なくとも1発の弾道ミサイルを、北東方向に向けて発射。最高高度約100キロ、約1100キロ飛翔し、朝鮮半島東の日本海に落下した。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外であったと推定されている。

北朝鮮が6日に発射したミサイルの飛翔軌道イメージ図(防衛省)

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高橋浩祐

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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