俳優の横浜流星(28)が蔦屋重三郎を演じる、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」(日曜・後8時=初回15分拡大)が5日にスタートする。連載最終回は同局の藤並英樹・制作統括が撮影の舞台裏を明かした。(宮路 美穂)
「蔦重」が生きた1700年代後半。藤並氏は「一見、世の中は経済も活況に見えるのに、どこか閉塞(へいそく)感があって、生きづらさを抱えている人もいる。身分社会や自然災害、現代の視聴者にも共感して見ていただけるんじゃないか」と江戸中期をテーマに据えた理由を明かす。
合戦のない大河だが「何者でもなかった蔦屋重三郎が、江戸の大商人になるプロセスに、あらゆる出版物や徳川家のできごとが要所要所で絡み合っていく。この時代のキーパーソンを全部(つな)ぐのが蔦重で、惑星のようにキャラクターが配置されていく。そこを丁寧に追いかければ物語は作っていける」。藤並氏とチーフ演出の大原拓氏、脚本の森下佳子氏は23年の連続ドラマ「大奥」でも江戸が舞台の作品を手がけ、時代劇のスキルや技術も「べらぼう」に還元できている。
「責任感と覚悟の人物」という蔦重の原点は遊郭・吉原。「華やかな部分や美人画、浮世絵など、吉原の文化の側面だけではなく、社会の構造や搾取の状況も描かないと説得力がないと思いました」と目を背けずに届ける。センシティブなシーンで俳優と制作の意思を調整するインティマシー・コーディネーター(浅田智穂さん)を大河ドラマで初めて導入。「役の大きさに関係なく、エキストラや通行人まで俳優や所属事務所に細かくヒアリングしてもらっている。みんなでコミュニケーションを取りながら撮影を進めています」
時代考証の山田順子さんとスタッフの総力を結集した吉原のリアルな街並みも見もの。「『吉原再見』を全部調べて作った地図をもとに美術セットを立て、VFXやCGも加えて吉原の世界を再現しています」。江戸の政治劇や駆け引きの舞台裏で、存在感を放つ蔦重のひらめき力。「蔦重が残した出版物を丁寧に追いかけていく。その発想の源がどこにあるのかを注目していただけたら」と語った。=おわり=