旭化成のアンカー井川は、はやる気持ちを抑えた。「絶対に出ないぞ」。ホンダの中山の後ろにぴたりとついてから10キロ以上。ラスト500メートルほどで得意のスパートをかけ、あっという間に突き放す。名門復活ののろしを上げるゴールテープを切った。 1区で高卒2年目の長嶋が、3000メートル障害で五輪2大会連続入賞の三浦(SUBARU)らに競り勝って区間賞。チームに流れを呼び込んだ。外国人選手が走れる4区を除いて区間6位以内にまとめ、トップが見える位置を保ち続けた。宗猛総監督は「ブレーキがなかった。チームワークの勝利」とたたえた。 4連覇を果たした2020年以来の頂点。5区を走ったベテランの大六野は当時との違いを「若手に勢いがあって、突き上げを感じる」。長嶋や井川、パリ五輪の1万メートルに出場した葛西らが台頭。直前に故障した東京五輪代表の相沢の欠場を感じさせないほど、選手層は厚くなった。 69回のうち3分の1を超える26度の優勝は、他の追随を許さない。選手としてもチームの一時代を築いた総監督は「近い将来は半分ぐらい勝ってほしい」と上機嫌で期待を口にした。