阪神大震災にまつわる手記の募集を企画した「デザイン・クリエイティブセンター神戸」の大泉愛子さん=2024年12月、神戸市
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琉球新報朝刊 神戸市が開設する「デザイン・クリエイティブセンター神戸」は、阪神大震災にまつわる手記を全国から募集し、ウェブサイトで公開している。被災経験の有無を問わないのが特徴で、担当者は「誰もが災害と無関係ではない。被災していなくても誰かの記憶に触れることで、経験が未来につながる」と意義を語る。 30年前の震災直後から手記を集めて出版してきた市民団体「阪神大震災を記録しつづける会」などと同センターが企画。会の事務局長を務める高森順子さん(40)は「当事者に濃淡はないはずなのに、語るほどの体験ではないと口をつぐんできた人もいる。1年目と30年目でも出てくる言葉は違う」と話す。 震災で5歳の娘を亡くし、年齢を重ねた今になって遺品の片付けを始めた母親や、亡くなった隣人親子の安否を確認できなかった女性の話。トイレの扉を閉めない母から全壊した自宅で救出を待った経験を聞いた若者の話も集まった。 企画した同センター職員大泉愛子さん(42)は「被災者の気持ちを理解するのは難しいかもしれないが、記憶を分かち合うことで、考えることにつながれば」と話す。仙台市出身の大泉さんは東日本大震災が起きた時は京都で勤務していた。被災した家族や友人と経験を共有できず、震災を語ることに引け目があったが、手記を集める中で考えが変わったという。 「まずは震災にかかわる言葉に触れてほしい。分からないまま受け取って、自分もこんなことがあったなと話し出すきっかけにしてもらえたら」と高森さん。
手記は1月中旬から3月末まで神戸市中央区のセンターで展示し、一部を特設ウェブサイトで公開している。