2年連続の開幕投手に指名された獅子のエース。今井達也の“変化”と“進化”にデータで迫る|パ・リーグ.com|プロ野球

埼玉西武ライオンズ・今井達也投手【写真:球団提供】

11月23日に行われた2024年のファンフェスタで、埼玉西武の西口文也監督が2025年の開幕投手として今井達也投手を指名した。これによって、同年に自身初の開幕投手を務めた今井投手が、2年連続でシーズン最初のマウンドを託される見通しとなっている。 2024年には自身初タイトルとなる最多奪三振に輝く活躍を見せ、名実ともにエースの座を襲名しつつある今井投手。今回は、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標を交えつつ、2024年シーズンに今井投手が見せた“変化”と“進化”に、データの面から迫っていきたい。

今井投手が記録してきた各種の指標について見ていきたい。

今井達也投手 年度別投手指標 ⓒPLM

今井投手の通算奪三振率は8.20と、先発投手としては高い水準に到達している。また、2018年から2020年までの3年間は奪三振率7.50以下と控えめな数字だったものの、2021年に奪三振率7.79と向上を見せたことを皮切りに、2022年以降はさらなる進化を遂げている点も特徴的だ。 まず、2022年は9試合で59.2イニングとややサンプル数は少ないものの、奪三振率9.20と投球回を上回る奪三振数を記録。また、2023年は133イニングで130奪三振を記録し、奪三振率8.80と十二分に優秀な水準に到達していた。 そして、2024年は173.1イニングで187三振を奪い、規定投球回に到達したシーズンでは初めて、イニング数を上回る奪三振数を記録した。奪三振率もキャリア最高の9.71と先発投手としては非常に高い水準に達しており、キャリアを重ねるごとに奪三振力を高めている点も特筆ものだ。

今井投手の奪三振率は2024年にパ・リーグで規定投球回に到達した投手の中で最も高く、投球回を上回る奪三振数を記録したのも今井投手と種市篤暉投手の2名のみ。この数字からも、今井投手の奪三振率が先発投手として最高レベルにあることがうかがえよう。

その一方で、通算の与四球率は4.76となっており、制球面にはキャリアを通じて課題を抱えていた。一軍デビュー直後の2018年と2019年は4点台の与四球率を記録していたものの、2020年には与四球率が7.59と大きく悪化。2021年と2022年の与四球率もともに5点台と、長年にわたって多くの四球を与えていたことがわかる。 風向きが変わったのは2023年のシーズンで、同年は4年ぶりに与四球率を4点台へ改善。そして、2024年は自身初めて与四球率を3点台まで向上させ、キャリア最多のイニングを投じながら積年の課題だった与四球の多さを克服しつつあることを示した。 与四球の多さは、1イニングごとに許した走者の平均を示す「WHIP」という指標にも影響を及ぼしていた。2018年から2021年までの4年間におけるWHIPはいずれも1.39以上と、走者を抱えながら投球するケースが多くなっていたことが数字に表れていた。 しかし、2022年にはWHIP1.19と過去4年間に比べて大きく改善され、2023年にはキャリア最高のWHIP1.11という数字を記録。2024年のWHIPも1.17と一定以上の水準にあり、走者の減少が投球の安定感向上につながっていることが示唆されている。

ここからは、WHIPに影響するもう一つの数字である「被打率」についても見ていきたい。今井投手の被打率はキャリア平均で.226となっているが、2018年から2020年までの3年間はいずれも被打率が.247以上と、キャリア平均よりも悪い数字を記録していた。 その一方で、2021年から2024年まではいずれも被打率.220以下と、4年連続でキャリア平均を下回る被打率を残し続けている。痛打を浴びる割合がシーズンを重ねるごとに減少していることも、今井投手が順調に実力を高めていったことの表れかもしれない。 ただし、被打率について考えるうえでは、この数字に大きな影響を及ぼす「被BABIP」についても見ていく必要があるだろう。被BABIPは本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表しており、投手自身にコントロールできる要素は少ないとされている。 今井投手が記録したキャリア平均の被BABIPは.270と、一般的な基準値とされる.300よりも低くなっている。この数字自体は総じて運に恵まれてきたことを示唆しており、2022年と2023年の被BABIPが、ともに.230台と非常に良い水準にある点もそれを助長している。 ただし、2024年の被BABIPは.281とキャリアで2番目に高く、キャリア平均の.270という数字も大きく上回っている。すなわち、2024年の今井投手は過去2年間に比べて運に恵まれなかったことになるが、同年は過去2年間と同レベルの防御率を記録し、被打率以外の投球内容はほぼ全てにおいて向上を見せていた点は興味深い要素となっている。

被BABIPと被打率が悪化する中でも、奪三振率の向上によって独力で打者をねじ伏せるケースが増え、四球で余分な走者を許すシーンも減少させた。投手自身にコントロールできる指標を重視するセイバーメトリクスの観点から言えば、2024年の今井投手はまさに理想的な成長を遂げていると形容すべき数字が並んでいる。 2019年以降は千賀滉大投手と山本由伸投手の2名が独占していたパ・リーグにおける最多奪三振のタイトルを、来期以降は今井投手が維持し続けるかたちとなるか。2年連続で開幕投手の大役を託される獅子のエースが見せる投球に、来季以降も要注目だ。

文・望月遼太

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