《ジョンベネ事件の真相》「警察は証拠となる脅迫状をダメにしていた」私立調査員と実父のジョン・ラムジーが司法に対して不満を抱き続けるワケ|au Webポータル

性的暴行を受け殺された当時6歳のジョンベネ・ラムジー…世界最大の未解決事件を解決に導く“決定的証拠”〉から続く

1996年のクリスマスの翌日、当時6歳のジョンベネ・ラムジーの遺体が発見された。美少女コンテストのビューティー・クィーンとして有名だった彼女の身にいったい何が起きたのかーー。10年以上事件を追い続ける私立調査員クラーク氏がつかんだジョンベネ事件の真相とは…。

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“重要参考人”が2024年4月、突然亡くなった

「2024年1月、その女性のミトコンドリアDNAの鑑定結果をボールダー警察に送りました。しかし、送る前に、誰のミトコンドリアDNAなのか名前は伏せておきました。DNA提供者を守った方がいいと考えたからです。しかし、数週間後、ボールダー警察から、誰のミトコンドリアDNAなのかと問い合わせが来たので、女性の名前を明かしました」

クラーク氏は、これまで様々な調査結果をボールダー警察に送っていたが、初めて、ボールダー警察の方から問い合わせてきたわけである。彼らも、ようやく、クラーク氏の調査に興味を持ったのかもしれない。しかし、クラーク氏は、その後、不可解な死に遭遇したという。

「その死は奇妙に感じられるのです」

不可解な死について、クラーク氏とともに調査を行っているデレク・ブロンメリッチ氏はこう話す。

「2024年4月のこと、我々が重要参考人と考えている孫息子と孫娘の弟にあたる人物が亡くなったのです。デンバー警察の報告書によると、その弟はフェンタニル入りのコカインの服用により死亡していました。しかし、死亡解剖をした検視官の報告書によると、メタンフェタミンというドラッグの過剰摂取による死亡と診断されています。警察の報告書と検死官の報告書が食い違うのはおかしい。

その弟がジョンベネ殺害に関わっているとは思いませんが、兄や姉にあたる孫息子と孫娘が繋がっていたドラッグ・カルテルについて知っていた可能性はあります。そのドラッグ・カルテルは、ジョンベネ殺害事件よりも前から、警察に守られていた可能性もあります。だから、その死は奇妙に感じられるのです」

クラーク氏は警察がラムジー家で押収した証拠物の中から、新たに、キッチンのテーブルの上に置かれていたアイスティー入りのグラスとゴミ箱に捨てられていたというティーバッグにも着目した。それはペパーミントティーのティーバッグだった。同氏がラムジー氏にそのティーバッグについてきくと、ラムジー氏は家族の誰もペパーミントティーは飲んでいなかったと話したという。ティーを愛好していたというパッツィーも、通常、ティーバッグは使わず、ステンレス性のフィルターにティーリーフを入れて作り、グラスではなくティーカップに入れてホットで飲んでいたというのだ。また、氷を入れているアイスボックスは空になっていたという。つまり、誰かが、ペパーミントティーのティーバッグとアイスボックスの氷を使ってアイスティーを作ったと推測される。

それは、誰なのか? クラーク氏はラムジー家に侵入してジョンベネを殺害した人物ではないかと推理している。同氏は、ジョンベネの胃袋から見つかったパイナップルは缶入りのパイナップルではなくフレッシュなパイナップルで、それは、ドラッグ・パーティーで提供されたパイナップルケーキに入っていたものではないかと推理しているが、アメリカでクリスマスシーズンによく飲まれるペパーミントティーのティーバッグもそのドラッグ・パーティーで提供されていたものではないかと考えている。

脅迫状の“警察の対抗措置とタクティクスはわかっている”

また、この事件では、犯人が残した身代金要求の脅迫状が重要な証拠物となっているが、クラーク氏によると、オリジナルの脅迫状はダメになったという。

「最初の検査では、脅迫状にパウダーをふって指紋が検出されましたが、それは脅迫状を手にした警官の指紋でした。2回目の指紋検査では、脅迫状はニンヒドリンという液体入りのトレイに入れられました。しかし、脅迫状の文字は分析官が席を外している間に、溶出してしまったのです。脅迫状はニンヒドリンにより溶出するシャーピーの水性ペンで書かれていたからです。犯人は、分析官が脅迫状をニンヒドリン入りのトレイに入れて検査すること、そして、それにより脅迫状がダメになることが分かっていたのでしょう。実際、脅迫状にはこんな一文があります。“警察の対抗措置とタクティクスはわかっている”と。犯人は、自分は警察より頭がいいと示したかったのかもしれません」

それにしても、なぜ、クラーク氏は、脅迫状がダメになったことを知っているのか? そんな疑問をぶつけると、同氏はボールダー警察のラボに電話したのでわかったと答えた。

「ジョンベネの事件を調査しているので、脅迫状のコピーがほしいと電話でお願いしたのです。すると、電話に出た女性は、私が警察内部の調査員と勘違いしたのでしょう、脅迫状は分析官が席を離れている間に溶出したと話したのです。途中で、私が警察内部の人間ではないことがわかった彼女は“今話したことは伏せて下さい。私がクビになります”と慌てていました」

ボールダー警察はネットフリックスのドキュメンタリー番組が公開されるのに先立ち、最新の捜査状況についてこう述べている。

「全ての証拠をデジタル化してサーチ可能なデータベースに入れた。それらのファイルには2100以上の情報、17州2か国で行われた1000以上の聞き込み、手書きの文面やDNA、指紋、靴の跡を含む200以上のサンプル、約2500の証拠物、100万ページ以上の調査内容が書かれた約4万の報告書が含まれている。ボールダー警察はラムジー一家とやり取りを続けており、どんな情報でも歓迎している」

もっとも、ボールダー警察のそんな声明に対し、クラーク氏の調査チームは不満を露わにしている。

カギを握る犯人の親族のDNA情報

「我々は2年前から警察と検事局に情報を提供している。25時間プレゼンテーションできるだけの情報を持っているのに、警察は全然興味を示さない」

同じ不満をジョン・ラムジー氏も持っているようだ。ABCテレビの報道番組「ナイトライン」でこう述べている。

「数ヶ月前、警察署長と話した時、彼は追加検査ができるほどのDNA技術がまだないと思うと話してました。私は、技術がまだないというのには反対です。技術はあります。私はある主要なラボのファウンダーらに会いましたが、彼らはやれることがあると話してくれました。彼らは検査を行って、調査を助けたいと思っているのです」

事件が起きた1996年当時にはなかった、現在のDNA技術で犯人を割り出したいと訴えたジョン・ラムジー氏。特に、今、未解決事件を解決するのに注目されているのが、犯人の親族のDNA情報だ。実際、1970年~1980年代、少なくとも13人を殺害し、50人以上の女性をレイプした“ゴールデン・ステイト・キラー”と呼ばれた連続殺人犯は、2018年、証拠物に残されていたDNA情報をDNA家系図サイトGEDmatchにアップロードしたことがきっかけとなって特定された。このサイトには、犯人の遠い親族のDNA情報が登録されていた。長い間、野放しにされていた“ゴールデン・ステイト・キラー”だったが、親族のDNA情報を見つけ、その親族の家系を辿ることにより、元警官のジョゼフ・ディアンジェロの逮捕に至ったのである。

ジョンベネを殺した犯人にも、犯人の親族のDNA情報を得ることで、たどり着けるのではないか。そう確信したクラーク氏の調査チームは、重要参考人の12人の親族のDNAサンプルを集めているところだ。

クラーク氏は今年もジョンベネの氷の彫像を作った。いつの日か正義をもたらしてみせる。そんな決意を込めて。

(飯塚 真紀子)

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